『Aquarius』 の雨宮教授と岬伊織の、その後
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― かりそめ ― 第十一話
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「…… どう、 して……」
僕は潤さんとしてじゃなければ、此処にいる理由がなくなってしまう。
「君が、潤の真似をしようとするのは、俺のせいなんだね」
教授の中の僕が、完全に僕に戻ってしまったら、僕はもう此処には居られない。
「本当に…… すまなかった……。あの日……、君を抱きながら、俺はまるで潤をこの腕に抱いているような錯覚をしてしまっていた」
―― 謝らないで。
教授の腕の中で、僕は俯いたまま何度も首を横に振った。
僕はそれでも幸せだったんだから。
「俺はずっと、潤が死んでしまったことを認めたくなかった。だから、君が大学に入学してきた時、本当はどこかで生きていた潤が、俺に逢いに来てくれたのかと思ってしまった。それほど君は潤に似ていたんだ」
潤は、俺が殺してしまったようなものだったのにね。――と、自嘲するような溜息が頭の上に落ちてきた。
「だけどね……」
そう続けながら、教授は僕の身体を包むように抱き締めてくれる。
「君は、潤じゃない」
「―― !」
その言葉は、まるで最後通告のように思えて、僕は教授の浴衣の背をギュッと握り、必死にしがみ付いた。
もうお前なんて必要じゃない。そう言われたとしても、それでも離れたくなかった。
「伊織……」
低い声が、優しく柔らかく耳に届き、両の掌で頬を包まれて、情けなく涙に濡れた顔を上に向かされる。
「君は潤とは違うよ。…… 潤は、こんなに俺のことを愛してはくれなかった」
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(つづきます・・・)
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