2015年10月28日水曜日

『album』―ESCAPE―extra(5)~(6)

(HP版で読む)




  カズヤさんのことを初めて知ったのは、

 僕が中学1年の時。

 とても暑い夏の日のことだった。

 カズヤさんも、僕の存在を長い間知らずにいた。

 そんな二人が一緒に暮らすことになった。

 『でも僕は、貴方のことを、これからも父親だとは思えないかもしれないよ。』

 口から出ていく言葉は、本心かもしれなくて、そうじゃないかもしれなかった。

 『それでもいいよ。』と、カズヤさんは言った。



 ―― 時々おじさんの話に付き合ってもらえると嬉しいんだけど…。

 ―― 別に、構わないけど。


  カズヤさんは嬉しそうに僕をギュッと抱きしめた。
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 ―― だから今、 


  僕はここにいる。――

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2015年10月21日水曜日

『album』―ESCAPE―extra(4)

(HP版で読む)


 「おはよう伊織。」

 柔らかな声で名前を呼ばれて振り向くと、

 ドアを開いて入ってきたその人は、

 たった今、起きましたという顔で。

 髪はボサボサで、パジャマのままで。

 にこにこと笑って僕を見つめて立っていた。

 優しい眼差しに、胸の中がほっこりと暖かくなった気がする。
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 僕には二人の父親がいる。

 ひとりは、僕が生まれた時からずっと傍にいてくれた人。

 母さんを愛して、僕を育ててくれた父さん。

 そしてもうひとりが、目の前にいる、母さんの恋人だった人。

「おはよう、カズヤさん。」




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2015年10月7日水曜日

『album』―ESCAPE―extra(3)

(HP版で読む)



  僕は、僕の通っていた高校の担任だった

 藤野先生のことを思い出していた。

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 昨日の朝の味噌汁の味を思い出していた。  

 二人してバカみたいにいつもよりも沢山作って、

 久しぶりにお腹がいっぱいになったことを

 … 思い出していた。  
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  そして…、    


 独りで食べるのが少し寂しいなんて思ってる。 

 … 慣れているはずなのに。

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