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2015年11月16日月曜日
R18BL短編『うそつき』(3)
はじめにこちらをお読みください。
(3)
「うん大丈夫、応援もいっぱい来てくれてるし、昨日も準備で遅くなっちゃったし、今日は上がって。」
「はい、じゃあすみません、お先です。」
店内を見渡すと、背の高い西脇さんが接客をしている姿が遠くに見えた。
まだまだ忙しそうな売り場を見ていると、バイトとはいえ、先に帰るのは気が引ける。
俺は店長にだけ挨拶をして、店を後にした。
*
従業員出入り口から外に出ようと重い鉄の扉に手をかけたところで、誰かが盛大に靴音を響かせながら階段を下りてくるのが聞こえていた。
今日はどの店も忙しいからな… と思いながら振り返らずに扉を開けて、一歩外に踏み出した。
「―― ちょっ、待ってよ、千聖!」
名前を呼ばれてびっくりして振り向くと、西脇さんが大股で駆け寄ってくる姿が見えた。
「どうしたんですか?」
「どうしたじゃないよ、冷たいなあ、俺を置いて帰ってしまうなんて。」
息を切らしながらそんなこと言われても、返答に困ってしまう。
「俺、今日は十九時上がりのシフトなんですよ。西脇さんは最後まででしょう? 高岡さんもまだ残っているし。」
「何言ってんの、俺は応援要員だよ? あいつは担当だから最後までだけど!」
だから、俺はもう帰ってもいいの! と続けながら、手に持っていたコートを羽織る。
「へえ、そうなんですか。じゃあ、お疲れ様でした。」
そう言って、先に歩き出すと、「ちょ、ちょっと待ってってば。」と、慌てた様子で追いかけてきて、腕を掴まれた。
「何ですか?」
「何って、駐車場はあっちだよ?」
掴んだ俺の腕を引っ張りながら、西脇さんは、駅とは逆方向を指差している。
「俺、電車なんですけど……。」
「だからさ、俺が車だから! 飯でも食いに行かない? って誘ってんだけど。」
「え? いや、結構です。」
何言ってんだろこの人。取引先の、しかもアルバイトを食事に誘うなんて、聞いた事が無い。
あまり関わらない方が良いかもしれないと思って、俺は踵を返し、さっさと歩き出した。
もちろん駅方面へ。
続きます。。。
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