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2015年11月18日水曜日

R18BL短編『うそつき』(5)


はじめにこちらをお読みください。




(5)



    ***



「…… なんでこんなところで。」


 西脇さんに連れてこられたのは、高級ホテルの最上階のレストランで、しかも個室。

部屋の真ん中の丸くて大きなテーブルに、二人きりで今、メインディッシュのステーキを食べている。


「え?美味いだろう?」


「…… そうじゃなくて……、こんな高そうなところで、しかもこんなカジュアルな普段着なのに。」


「ああ、そんなこと気にしなくていいよ。ここ俺の知り合いのホテルだから。」


 そういう問題でもないと思うのだけど! 西脇さんは俺の心配なんて気にも留めない様子で、
「服装だって、個室なんだから、どうってことないでしょ?」と、笑う。

 それはそうだけど、こんな高級な場には慣れていないし、居たたまれない感でいっぱいだった。それに、ずっとこの人のペースで会話が進んでいくのが、なんだか悔しい。


「ところで、ワインなんて呑んで、車の運転が出来なくなるじゃないですか。」


 頭の中に浮かんだことを、そのまま口に出してやる。どうだ。言い返せないだろう? と、思っていたのに、それくらいの嫌味なんて、軽くあしらわれてしまう。


「え? いいんだよ、今夜はここで泊まればいいし。」


―― え?

―― その言葉に絶句する。

 なんだよ、俺を家まで送るって言ったくせに、自分は最初からここで泊まるつもりだったのか!

 心の中で舌打ちをしながら、ステーキをフォークに刺して口に運ぶ西脇さんの左手の薬指に光るものを見つけて思わず、「…… あ、」と、声を漏らした。




「ん? あぁ、これ? 結婚指輪がどうかした?」


「結婚してるんですか?」


「そうだけど? なんで?」


 だって……、


「さっき、独りで食事するのは、嫌いだって言ってたから、てっきり……」


 俺の言葉に西脇さんは、少し考えるようにして宙を見る。

そして暫くしてから漸く、「ああ! そう言えば、そんなこと言ったね。」と、悪びれもせずに笑った。

「嘘……だったんですか。」


「いや嘘じゃないよ。結婚はしてるけど毎日嫁さんと二人で食事するとは限らないでしょう?」





続きます。。



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