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2015年11月21日土曜日

R18BL短編『うそつき』(8)


はじめて読む方は、こちらから。




(8)


「美味しい?」


 唇が僅かに触れるような位置で、西脇さんが艶然と微笑む。

 なんでこんな事になってるんだ? 頭の中がパニクって、何がなんだか分からない。

 いや、待て、冷静になろう。まず今、なんでホテルの部屋にいるのか確認してみよう。

「あの、なんで俺、ホテルの部屋にいるんでしょう?」


「なんでって、千聖、酔っ払って寝ちゃったから、俺が部屋取って運んであげたんだけど?」


 ―― 酔っ払って? ……グラス一杯のワインで? いやいや、そんなわけないだろう。


「あのワインに、何か入れましたよね?」


「俺が? 何を入れたって言うの? 千聖、エロ小説の読み過ぎじゃないの?」


 西脇さんは手を伸ばして、グラスをベッドサイドチェストに置くと、またギシリとスプリングを鳴らして、俺へ覆いかぶさるように、唇を寄せてくる。


「え、わ、わっ、何するんですか!」


 紙一重で首を横に振ってそれを躱すと、今度は両手で頬を挟まれて固定された。


「何って、キスしたいんだけど。」


「な、に、言ってる……っ、」


 言葉は柔らかい唇に触れられて、阻まれてしまった。

 引っ張るように上唇を食んで、至近距離に見つめられる。


「してもいいでしょ?」


「……訊く前に、してるじゃないですかっ。」


 西脇さんの胸を両手で押し返そうともがくけれど、なんだか身体が怠くて全然力が入らない。

 ―― ワインに何も入れてないなんて、絶対嘘だ!


「……店で初めて千聖を見た時に、運命を感じたんだ。」


 ―― そんな調子のいい嘘、中学生だって信じない。


「ふ、ざけ……ッ、ん、」


 また唇で塞がれる。

 すかさず咥内へ侵入してくる舌に、奥へと逃げようとする俺のそれは、難なく絡め捕られてしまった。

「ーッ、……ん、……、」


 熱い舌に翻弄されて、自分の下肢が熱くなっていくのを感じる。

 キスをされているだけなのに、こんなに感じてしまうのが、恥ずかしくて情けない。

 動かない身体で、唯一抵抗の意思を示していた、西脇さんのシャツの袖をギュッと掴んでいた指先からも、力が抜けていく。





続きます。。



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