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2015年12月1日火曜日
R18BL短編『うそつき』(17)
はじめて読む方は、こちらから。
(17)
「俺も……、西脇さんが…… すき。」
すき……なら、言える。
すきって言葉には、色んな意味があるから。
「ねえ、好きじゃなくて愛してるって言って欲しいんだけど。」
愛してるなんて、俺は、西脇さんみたいに嘘を上手く吐けないから。
「せめてさ、名字じゃなくて、名前で呼んでくれない?志芳って。」
「…… 嫌です。」
名前でなんて呼ぶもんか。何故か頑なにそう決めていた。
プイっと横を向くと、クスッと笑い声が聞こえて、頬に唇を押し当ててくる。
「本当可愛い。千聖って俺の癒やしだな。」
「やめてください、可愛いなんて…。」
そんな事を言われても、嬉しい訳がないのに、顔が赤くなったのを見られたくなくて、 視線から逃れたくて、背を向ければ、背後から抱きしめられる。
背中に感じる肌が熱い。
「仕事で嫌なことがあっても、お前に逢えば忘れられる。もっと頑張ろうと思える。」
そう言って、後ろから俺の肩口に顔を埋めて、「千聖は、俺のやり甲斐だな。」と呟く。
それはいつもの同じ台詞で、きっと誰にでも同じことを言ってるんだと思う。
いつだって自分勝手で、強引…… で、
―― うそつきだった。
*
余韻が残る身体は、なかなか起き上がる気にもなれなくて、夢と現実の狭間を行ったり来たりしていると、ふわりと、煙草の香りが漂ってくる。
目を開けると、隣には西脇さんの姿はなくて、シーツにも温もりは残っていない。
テレビの画面から放たれる光が、薄暗い部屋を照らしている。
流れてくる音は、ベッドに寝ている俺には、内容が全く分からないほどに、小さく絞られていた。
西脇さんは、部屋の中央に置いてある小さなローテブルの前で、クッションソファーに、体操座りにような形で座っていた。
膝頭に肘を置き、指に挟んだ煙草を口元に運びかけて、上半身を起こした俺に気付いたのか、視線を此方へ向けてきた。
「あ、目が醒めた?」
そう言って、吸った煙草の先が、暗がりで明るく灯る。
続きます。。
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