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tonberi & zu-cha 140SSリレー
『サクランボとクリスマス』
青い字が、tonberi
赤い字が、ずーちゃ です。
続きからどうぞ…↓
「時間って?」
スクッと立ち上がった裸の後姿を見上げながら、伊織は気怠そうにベッドに横たわり、「何か予定でも?」と、続ける。
李央は肩越しに振り返り伊織にチラリと視線を送りながら、「まぁ、そう。」 と、答えた。
「ふーん。じゃあ僕は、李央が帰ってくるまで此処で寝ててもいい?」
「うん、いいよ」
気怠そうに瞬きをする伊織に向き直った李央は、ベッドのヘッドボードに掛けてあったタオルを手に取り、差し出す。
「おやすみ、伊織。」
猫にするように下顎を撫でれば気持ちよさそうに目を閉じた伊織に、腰を屈めた李央は軽く唇を押しつけてから部屋を後にした。
重い瞼は一度閉じたら開けることが出来ずに、伊織は静かに閉まるドアの音を聞いていた。
―― 『僕のこと、迷い猫とでも思ってるのかな李央は。』
さっき撫でられた下顎が擽ったい。身体が重く指一本動かすのも怠いのに、すぐに出かけるなんてタフだなと思いながら伊織は深い眠りに包まれていく。
バスルームで熱めのシャワーを浴びた李央は、その後部屋に戻り、脱いだ物を身に着けていく。
上着に手を通した時、携帯が着信を知らせている事に気がつき、伊織のズボンから取り出し、枕元に置く。
「伊織電話だよ」
寝息を立てる横顔へ囁き、「じゃあね伊織。」 と、微笑みながら、李央は部屋を後にした。
ゆっくりと意識が浮上して、伊織は重い瞼を薄く開ける。
何の物音もしない暗い部屋。覚醒したばかりの頭でぼんやりと、ここが李央の部屋だと思い出す。
部屋は黒いカーテンがきっちりと閉めてあって、昼か夜かも分からない。
「今、何時…。」
暗がりで点滅する携帯に気付いて、手を伸ばした。
ディスプレイの眩しさに目を細め、時刻を確認した後、着信履歴を開いた。
「あ…、」
一眠りしてやっと落ち着いた鼓動が、その名前を見て一度大きく跳ねた。
それは伊織にとって、今一番心地いい空間をくれる人からの着信だった。
「ん…、僕も行かなきゃ。」
気怠そうに伊織はその身体を起こした。
シャワーを浴び、タオルで水気を拭い、裸のまま寝室に戻る途中で何かに躓いて転びそうになった。
「何これ。」
床に置いていた紙袋が、ガサッと音を立てて倒れ、中から出てきたのは、サンタの衣装と…、
「ハーネス?」
伊織はそれを広げて、クスっと笑う。
「今度はこれで、どんな遊びを教えてくれるのかな。」
徐に手に取ってみると、真っ黒なレザーの感触が肌に吸いつくようで、なんだか気持ちいい。
これを李央の手によって己の身体に付けられてしまうのか、李央自身が身に着けるのか。想像した伊織は口元が弛んでしまう。
制服に着替え終えると、ハーネスの入っていた紙袋をベッドの上へ置き直した。
「ふふ…。」
思わず笑いが零れてしまう。
いつも李央は、伊織が今まで経験したことのない快楽を教えてくれる。
「そう言えば、前に臣の店に連れてってくれると言ってたっけ。」
次はいつ逢えるのか楽しみでしょうがない。
「またね…、李央。」
誰もいない暗い部屋にそう呟いて、伊織は部屋を後にした。
続きます…
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ぽちっと↓
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