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tonberi & zu-cha 140SSリレー
『サクランボとクリスマス』
青い字が、tonberi
赤い字が、ずーちゃ です。
続きからどうぞ…↓
「…父さん?」
だけど灯りを点けて辺りを見渡しても、その姿は見えなくて、伊織は乾いた声で笑う。
「あはは ……。」
逢いたいと思う気持ちが幻聴を聞かせたのか。
シャワーを浴びても収まらない熱をもてあまし、伊織は家を出て駅前でタクシーを拾い、夜の街へ消えていった。
その頃李央は…
「これで何度目だ?」
「あ…はッ、」
臣に抱えられている李央の脚の痙攣が止むと、ダラリと肩から落ちた。
李央は臣の問いに答える気力もない。
「俺には無理だって言ったバチだな。」
あれから李央のモノに食い込むベルトが外される事はなかった。何度もイっているのに射精ができない。
「どうなんだ?李央。」
究極の苦痛と快楽を味わい、李央はただ恍惚の表情を浮かべていた。
ベルトを外して欲しい。けれど気が狂いそうに気持ちいい。意識は飛びそうなのにイきっ放しの体内は今も誘うように臣を締め付け蠢いた。
その時不意に、ベッドの端に放置していた携帯が鳴り響く。
鳴り続ける携帯を、臣が手に取り李央の頬をそれで軽く叩いた。
「李央、電話。」
ヒヤリとしたメッキに朦朧としていた意識がフッ戻ってくる。
「…誰。」
枯れた声で李央は聞くと、臣は通話を押し李央の耳に当てた。
「あっ…李央?」
聞き覚えのある少し不安げな声がした。
「伊織か…」
―― 良かった出てくれた―
予想に反して繋がった電話に、、瞬時に胸が跳ねた。
だけど聞こえてきたその声は酷く掠れていて、
「ごめん…寝てた?」と、聞けば 「いや…何?」と、気怠そうな呼気と共に問われて伊織は口籠る。
だけどどうしても…我儘と分かっているけどもう一度 ……
「李央に逢いたい」
「ついさっきまで一緒にいたのにもう?」
枯れた声で笑われ、伊織は呆れられたかと思い慌てて口を開いた瞬間、「いいよ」と、李央の声がした。
「え?」
咄嗟にそう漏らすと、李央はまた笑い出した。
「今どこ?」
臣の手から携帯を取り伊織と会話をしながら上体を起こした李央は、臣の胸を押しやる。
「本当に?」
逢えるの?
そう思えば心臓がドキドキと高鳴り、自然に声が弾む。
「だから今どこ?」
もう一度そう聞かれ、伊織は視線を上げた。
バックミラー越しに気の弱そうなタクシーの運転手と目が合うが、彼はそそくさと視線を逸らした。
「今…タクシーに乗ってる。どこに行けばいい?」
「なら臣の店においでよ。そこで待ち合わせよう。場所言うからそのまま伝えて。」
李央の言葉を繰り返し、運転手に告げ終えた伊織は嬉しそうに電話を切った。
「勝手に決めるな。」
「いいじゃん。」
不満そうな顔に李央はキスをし、腰を引くと、体内から臣を吐き出した。
「ンッはっ…俺達もいこう。」
やっぱり今の僕を満たしてくれるのは、李央しかいない。
さっきまで気付きもしなかった窓の外は、クリスマスのイルミネーションが煌めいていた。
*
目的地に着き、伊織は皺のよる万札を運転手の手に無理やり握らせて微笑む。
「誘ったのは僕だもの。」
そう言い残し、伊織はタクシーを降りた。
続きます…
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ぽちっと↓
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