2017年3月27日月曜日

『出逢えた幸せ』第二章:迷う心とタバコ味の……(6)

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第二章:迷う心とタバコ味の……(6)



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 あの夜のことは、もう忘れよう。

 そうだよ、別に大したことないし。 ただセックスしただけだし。 お互い気持ちよかったんだし。
 いつもと違ったのは、相手が男だったってだけで……。 いい経験させてもらったって、思ってればいいんだ。
 それで終わり。 また次、なんてありえない。
 なのに、何でこう、透さんのことばかり、思い出しちゃったりするのかな。

 …… どうかしてる。


 目を閉じれば、浮かぶのは、透さんの漆黒の瞳。

 ――直…… と、甘い声で囁いて、唇を重ねる。

 程よく筋肉がついた、しなやかな身体。
 真っ直ぐに伸びている美しい鎖骨。
 触れたくて、手を伸ばしてるのに、なかなか届かなくて、焦れったくて、


「…… 透さん……」


 名前を呼ぶと、優しく微笑んでくれる。
 でも、目の前が霞んできて、よく見えなくて、段々消えていく、透さんの影。


 ――待って……、透さん。 


 透さん……


 透さん……


「透さんっ!」


 目を開けると、いつもの天井。


 ―― 夢かよっ!


 もう忘れようと思ってるのに、気がつけば、透さんの事ばかり考えちゃうから、とうとう夢にまで出ちゃったよ!

 あの朝、透さんの残したメモに書いてあった電話番号を、結局俺は自分の携帯に登録しなかった。


 ―― だって、俺から電話なんて出来ないよ……。


 透さんにとっては、ただの気まぐれで……。
 俺もきっとそう。
 俺から電話をして、会ったとして…、それから? またセックスする?
 それって、セフレって事でしょ?
 確かにセフレな関係の女の子は、何人かいるけど…。
 透さんとセフレなんて…嫌だ。


 ―― え?


 セフレが嫌なのか?…… 俺。


「俺は……」


 好き…… ? 透さんを?


「いやいやいやいや!」


 男を好きになるのは、俺は…… ありえない!
 今まで、女の子しか好きになった事な……、


 ―― え?


 俺、今まで本気で相手を好きになった事って、あるのかな。
 何人か、ちゃんと付き合った事はあるよ。勿論ちゃんと好きだったよな?
 うん、好きだったよ、ちゃんと! ……長続きはしなかったけどさ……。

 だから透さんを好きになるなんて…… ありえない。 透さんのことは、ただ……、憧れてるだけだから……。

 憧れと恋愛は、違うよね?


「はぁ~」


 考えても、分からないよっ。

 ぶんぶんと、首を横に振って立ち上がる。
 ふと、造り付けのクローゼットにはめ込まれている鏡が目に入った。
 Tシャツの襟ぐりを、肌蹴させると、鎖骨のすぐ上に透さんの付けた赤い痕が、まだ残っている。
 そっと指先で、赤い痕をなぞってみると途端に、あの夜のことが、頭を過ぎる。
 熱の籠った眼差しや、濡れた唇。 何度もキスをして、咥内で縺れ合う舌や吐息。
 汗ばんだ肌の上を、滑る指先。
 思い出しながら、透さんに触れられた通りに自分の指を辿らせる。
 目を閉じると、鮮やかに蘇る、その光景。


「……っ」


 下半身に熱が集まり始めたと思ったら、あっと言う間に勃ってしまった。






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