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2015年11月27日金曜日

R18BL短編『うそつき』(13)


はじめて読む方は、こちらから。




(13)


 驚いて見上げると、西脇さんは悪戯っぽい笑顔を俺に向けた。


「俺の連絡先、入れておいた。」


「ええ? 勝手に?」


 俺は、驚きと怒りで、固まってしまって、相手を罵ることすら忘れてしまっていた。

 そんな俺を、気にも留めずに、西脇さんはコートを羽織り、鞄を手にすると、俺の頬にリップ音を立ててキスを一つ落とした。


「じゃあ、また連絡するね、おやすみ。」


 手をヒラヒラさせながら、足早に部屋のドアへと向かう後ろ姿を、ただ呆然と眺めているだけの俺。

 やがてドアを開いて、その姿は外へスッと消えて、ドアの閉まる音が虚しく部屋に響いた。


「えっ、ちょっ、待てって……うわっ!」


 我に返って、慌ててベッドから降りようとして、纏わり付いた上掛けに脚を取られてしまう。

 無惨にも、床に倒れ込み、額を打ち付けてしまった。


「いって……っ、くっそっ!」


 ああ、もうなんだか、カッコ悪いっていうか、情けない。


「ちょ、酷くないか?これ。」


 俺だっていっぱしに、夢があったんだ。
 
 男同士なんて、好きになった相手には、なかなか告白もできないし、上手くいくなんて夢のまた夢だったけど、それでも、初めての時はもっと…。


 ―― もっと、何だって言うんだよ。


 どうせ、好きなやつなんて出来ても、上手くなんていくわけないんだから、夢をみたって仕方ないじゃないか。

 こんな風に軽く扱われるのが、俺にはお似合いなんだ。

 だけど……


「…… う……っ、」


 置いて行くなんて、あんまりだ。

 あんな奴に、俺の初めてを何もかも奪われたなんて、情けなくてしようがない。


「くっそ…… 涙が止まらない。」


 後から後から出てくる涙を止められなくて、俺は床に額を擦り付けた。


 ―― どうせなら、涙が枯れるまで、思い切り泣いてやるっ。


「うーっ、…… うっ、ひぃっく」


 いったい、いつぶりだろう、こんなに声を出して泣くのは。






続きます。。



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