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2015年12月5日土曜日

R18BL短編『うそつき』(21)


はじめて読む方は、こちらから。




(21)



 バイトが終わって、俺は急いで外に出て、指定されたカフェに向かう。

 早く行かないとと、時間を気にしているけれど、そこに向かう足は重い。


 ―― 行きたくない。


 頭の中で、自分の声が響いていた。

 恐る恐る電話に出た俺に、受話器から聞こえてきた声は、やけに落ち着いた女の人の声だった。


『…… 西脇の家内です。と言えば、どういう用件かお分かりですよね。』


 ―― なんで、なんで、西脇さんの奥さんから直接電話が掛かってくるんだ?


 歩きながら頭の中でぐるぐると考えるけど、答えは見つからなかった。


 ―― まさか、西脇さんが浮気をしていると気付いて、探偵雇ったとか? 西脇さんは、この事を知っているんだろうか。


 バイト中だったから、連絡をする事も出来ず、終わってからも、急いで店を出てきたから、そんな余裕は無かった。


 ―― いや……、電話をしてみよう。


 そう思って、俺は歩きながら携帯を取り出した。呼び出し音は、5回鳴って留守電に切り替わる。


 ―― そうか、まだ仕事中のはずだ…… どうしよう……。


 徐々に不安が押し寄せてきて、胸が早鐘を打ち出した。

 だけど、そうしているうちに、目線の先に、指定された店のサインボードが見えてきてしまう。

 足が勝手に立ち止まりそうになるけれど、ここで帰ってしまっても、この不安が消えるわけじゃない。

 俺は意を決して、店内に足を踏み入れた。


 店の中は、この時間のわりには、空いていて、電話で教えてもらった服の色はすぐに見つけることができた。

 深い青のニットのワンピースは、少しゆったりしているけれど、妊婦の体型を隠せるほどではない。

 奥さんが妊娠しているなんて、西脇さんからは何も訊いていなかったから、驚いて立ち止まってしまった。

 俺の視線に気付いて、その人はゆっくりと立ち上がり、軽く会釈をする。





続きます。。



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