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2015年12月6日日曜日

R18BL短編『うそつき』(22)


はじめて読む方は、こちらから。




(22)


  丸く大きなお腹以外は、細くて…小さくて可愛い人だ。だけど、俺を見つめる瞳は、意思の強い光を放っていた。


「…… あなたが、千聖くん?」


問われて、俺は小さく頷いた。


「ごめんなさいね、仕事中に電話したりして。どうぞ、座って。」


「いえ……、失礼します。」と、俺も軽く頭を下げて席に着いた。


 だけど、目の前に座っている人の顔を直視できなくて、俯き加減な俺のことを、その人はじっと見つめてくる。


「単刀直入に訊くね?…志芳と寝たの?」


「…… !」


 問われた言葉に、俺は思わず顔を上げた。あまりにも単刀直入過ぎて、俺は訊かれたことにどう答えたらいいのか分からなくて。


「…… いいえ……。」


 小さい声で、そう否定するしかなかった。


「いいのに、正直に言ってくれても。ホテルを使った時に、志芳はクレジットで支払いしてたのね。それで分かってしまったの。最初は否定してたけど、すぐに観念して本当のこと喋ったのよ。」


 彼女は、そう言って、オレンジジュースの入ったグラスを手にして、もう片方の手でお腹の上の方を摩っていた。

 その姿を直視できなくて、俺はまた視線を逸らしてしまう。

 ホテルのことがバレて、それで本当のことを言ったにしても、俺の名前もバイト先まで喋っちゃったのか?あの人は。


「腑に落ちないって顔してるね?志芳はね、私が問い詰めたら何でも喋ってくれるのよ。」


 結婚した時から、私には隠し事をしないことになってるからね。と、続けた。

 それは、二人の仲が揺るぎないということを、俺に分からせるために、そう言っているように聞こえた。


「じゃあ、質問を変えるね。千聖くんは、志芳のこと本気なの?」


「…… 俺…… は……、」


 ―― なんで躊躇してるんだ俺。はっきり本当のことを言えばいいのに、本気じゃないって。
 なのに、その言葉がなかなか出てこない。

 何度も言おうとするんだけど……、そうすれば、とりあえずこの場は簡単に終わるのに。

 なのに俺はその言葉をなかなか言えずにいた。








続きます。。



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